私たちが住むネルソンは、ニュージーランド南島の北端に位置します。
郊外に住む人口を含めても10万人足らずの小さな町です。
そのネルソンの中心地から、約50kmほど離れた、本当に何もないところに家を建てました。
玄関から公道に通じるゲートまで1km以上、そして隣まで2kmもあるところです。
辺りが真っ暗だから、先日、空を見上げると不思議なものが見えました。
空に浮かぶ月の周りに、金色の大きな輪が煌々と輝いていたんです。
ずっと見上げていました、空に描かれた不思議な大きな円を。
でも、しばらくぼーっと見ていたあとに、気づいたんです。
実際は「煌々と」としてるのでなく、自分たちが暗闇にいるから見える光なんですね。
暗いところだから見えること。
じっとしているから感じられること。
穏やかだから感謝できること。
このごろ、そういったものを大事だと思える自分がいます。
Listen to yourself
素敵な、そして尊敬する両親の庇護下、自然の中でのびのびと育った幼少時代。
九州の田舎で、ただただ外に出ることだけをずっと考えていた10代。
もがきながらも、いろんな人に逢って、いろんなことをやって、いろんな体験をした20代。
陽の当たる場所を進むことを当然と考え、自分も、そして周りの人も傷つけながら生きた30代。
そして、自分の心と向き合いながら、本当に好きなこと、好きな人と出会うことが出来た40代。
明日から始まる2011年は、その40代の折り返しの座標を通り過ぎる大事な年です。
今までの、どんな些細なことや、出会いでも、それが無ければ今の自分が無い。
だから、そういったすべてのことに、感謝の気持ちをきちんと常日頃持ち続けることが大切。
そんな当たり前のことが出来るような、きちんとした大人になる最後のチャンスなのかもしれません。
Listen to yourself
暗いところに行くと、人は見えるものを探します。
本当は、暗いからこそ見えることがあるのに。
光に慣れきった現代人は、闇は悪だと考え、そしてよくないものだと考えがちです。
部屋に帰るとすぐに明かりをつけ、どんな田舎の寂しい道路でも街灯を必要とする。
夜の街は昼間のように明るく、コンビニは夜を知らない。
自分の心が暗くならないように、いつもテレビをつけ、インターネットに繋がって。
一人でいることを認めたくなくて、明かり(都市、人の集まり)の下に自分を置く。
それが当たり前のことだし、それが正しいことだとも思っている。
海洋冒険家の八幡暁さんと一緒に、夜の海を漕いだときに言われました。
「藤井さん、ヘッドランプは消してください。海も星も見えなくなりますから。」
夜の闇の海を進むのに必要なのは、灯りではなくて、星や波や風を感じることなんです。
Listen to yourself
ニュージーランドでの生活が教えてくれたことは、不便なことがどれだけ大切だということ。
不便なことがあると、そんなことに出会うたびに、どう対処するかという「自分」が必要とされる。
面白くないテレビ番組のことに不満をぶつけるんじゃなく、テレビを見ないという選択をする。
周りが暗いということは、たくさんの星と綺麗な月を見せてくれる夜空があるということ。
小さな村に棲むということは、素晴らしい人々と深くかかわることだということ。
刺激のない静かな時間が多いことは、自分の中にあるものに耳を傾ける余裕があるということ。
自然の真ん中にいると、人間がどれだけちっぽけなものかを体感します。
自分自身がどれだけ小さな存在なのか。
それを認めることって、とても勇気がいること。
でも、それが出来たひとは人にも優しく出来るんじゃないかと思う。
Listen to yourself
不安な時代だからこそ、自分がどういう人間であるかということ。
自分が何をしたいのか、何が出来るのか、ちゃんと自分でわかっていることが大事なのかもしれません。
自分に限界を設けることは、まだしたくないし、するべきだとも思っていない。
じたばたをやめるには、自分はまだ子供すぎる。
でも、無理する自分を肯定する時期はもう過ぎたと思う。
楽しめない自分を、「勉強だから」「成長のためだから」と叱咤する必要性も感じなくなった。
日本に昨今溢れるビジネス書、そして人生の指針を訴えるたくさんの新書等。
でも、「成長する」「頑張る」「上のレベルへ」、私はそういう考えをポジティブ思考だとは思えない。
一番素晴らしい考え方は、「今の自分」を受け入れ、肯定することだと漠然と思う。
だれにとっても、生きていくことは大変なこと。
だから、今生きているという状態を肯定することから始めないと。そう思う。
そんなこと言っているけど、私の場合はたくさん時間がかかった。
10代、そして20代のころは、自分は何でもできると思っていた。そう信じていた。
30代は、自分が他人にどう見られているか、そればっかりが気になっていた。
40代になって、やっと立ち止まって周りを見ることを覚えた。
本当に強いということは、人にどう思われるか気にならなくなること。
そんなことが、ちょっとずつだけどわかってきた。
Listen to yourself
自分の身体に、そして自分の心に耳を傾ける。
そんな静かな時間をたくさん持てる、明日から始まる来年はそういう年にしたい。
2011年も、よろしくお願いします。
最近のコメント