博多山笠に参加させていただいて、今年で11年目。
でも、今年は私にとって、一番特別な山笠だった。
福岡のど田舎で育った私にとって、博多の伝統正しきお祭り、祇園山笠は永遠の憧れでした。
13年前、お取引先の九州電力の方が山笠に参加されていると聞いて、心がざわついた。
その当時は、東京に住んでいながらも、どうしても参加して、いてもたってもいられなかった。
だから、会社の大事なお客さんであるのにもかかわらず、ただ、ただ、お願いしたんです。
「精一杯やりますから、山笠に参加させてください!」
その後2年が経過し、ご厚意から土居流の中土居町の一員として念願の水法被に腕を通すことに。
右も左もわからないまま、山笠の世界へ飛び込んだ。
平成12年のことだった。
伝統を重んじ、長い年月を経てきた型を重んじる山笠のしきたりは、年功序列。
この場合の「年功」は、山笠にどれだけ貢献してきたか。
年齢は、まったく関係ない。ある意味、厳格な成果主義。
6人が乗った山笠の重量は、軽く1,000kgを超える。
車両も何もついていない、この「ヤマ」を26人のかき手と呼ばれる男たちが、気合いで動かす。
コントロールするのは、鼻取りというベテランの方々。
そして「ヤマ」の脚を付ける(スピードを出す)のは、後押しと言われる男たちの一団だ。
普通の祭りの御輿を担ぐのと、まったく違うのが、この「ヤマ」走るんです。
最終日である、7月15日の追い山では、5kmを30分程度で走り抜けます。
26人のかき手も、そして後押しの集団も、力のいっぱい「ヤマ」を動かす。
そして、力尽きると同じ流(ながれ)の同士が「走りながら」引き継ぎます。
動きながらの交代。
体力ギリギリの頑張り。
気合いと、そして慎重な取り組みがなければ、すぐに怪我人の山です。
究極の、そして極限のチームワークです。
今年は、ニュージーランドに移住してから山笠に参加して4回目。
さすがに博多の人にも、馬鹿だねぇ、と言われるように。
山笠用語で、「ヤマのぼせ」と言います。
おかげさまで、自他とも認める「ヤマのぼせ」になりました。
でも、今年の山笠は、私にとって本当に不思議な体験だった。
山笠の凄いところは、日常が非日常に一気に変わるところ。
今まで車やバスがひっきりなしに通っていた大きな公道が、いきなり静かに。
打ち水がまかれ、手ぬぐいを頭にしっかりと巻いた男たちが道を埋め尽くす。
「前、斬らんかい!」
怒声がこだまする。
「オイサッ!オイサッ!」の掛け声。
そして、そこに大きな「ヤマ」が怒涛のように進むのです。
その前後には、何百人の人々が伝統の締め込みと水法被姿で連なるように走っている。
770年以上も続くこの祭りは、現代の町並みも一気に違うものへと変えてしまう。
今年、初めて気づいた。
この祭りは、「自然」なんだって。
山笠は、私がこの世に生を受ける前からも、その営みを脈々と続けてきた。
福岡の町に、大きなビルやアスファルトの道路が出来る前も、ずっと生き続けていた。
政府が変わろうと、経済が変わろうと、街の名前が変わろうと、ずっとそこにあったんだ。
まるで、人間の営みを達観している、森の巨木のように。
人間ひとりの人生なんて、小さなもの。
山笠は、タイムマシーンのように、私たちを過去に、現在に、そして未来に連れて行ってくれる。
なぜなら、ここにあるもので一番変わらないのは「山笠」だから。
「ヤマ」に関わる男たちは、熱い。
その「熱さ」を、熱っぽくしゃべる。
クールなことが格好いいとされる年代の子でも、山笠だけは別だ。
大きな声を張り上げて、力いっぱい走る。
眼に見える「自然」ではなくて、こうやって、人々の心の中に生き続け、伝え続けられる「自然」。
それは、私たちが一生懸命になるということが、人間の本来の姿であるということ。
もっと言うと、動物である「人間」が備えている「自然」なんだと思う。
人間は、熱いものだ。
絶対にそうだ。
心の触れるものがあれば、誰でもそこに向かって全力で向かって行くものなんだ。
酔えば酔うほど、飲めば飲むほど、その熱さは増す。
「藤井さんは、もっと半身になってヤマを前に担うようにせんからいかんですもん。」
年齢なんて関係ない。
男たちの、思いと、プライドと、そして意地とがぶつかる。
どれだけ頑張っても、770年も続くこの「巨木」には敵わない。
でも、だからこそ、子供になって、この原っぱで思いっきり遊びたい。
遊べるだけ、力の限り、「本気で」遊びたい!
大きなものを前にしたときの、あの昂ぶった気持ち!
11年目で、初めて気づいた。
暑い、そして熱い博多の7月。
大きな山笠は、この博多という町を、男たちのために大きな野原に、ジャングルに、そして深い森へと変えていく。
俺たちは、裸になって、その「自然」の中を思いっきり走り回る。
そう、ただの子供たちに帰るんだ。
来年も、そしてその次も、私は、精一杯、子供に帰る。
そして、博多の街を、ちかっぱい走り回る。
ブログだけだとどこにいる人やら。。。
パワーは、すごいですね。
いい仕事は、このパワーが源でしょうか。
頑張らねば。
お邪魔しました。
投稿情報: ヒゲヂィ | 2010年9 月 6日 (月) 22:48
そうか あのパワーの源は此処にもあったのか。納得しますね、南の国から毎年担ぎに来る人は九州男児といえども2人といないのでは・博多の人もあきれているでしょう。それともそういう町なのかな、また楽しい話題待ってます。
投稿情報: アムチ Y | 2010年9 月15日 (水) 16:42
はじめまして、こんにちは。
ブログを拝見して、twitterをフォローしました。
私も博多っ子、そしてHoneymoonはNZでした。何かご縁を感じて。
今は東京に住んでいるのですが、早起き(徹夜)して毎年追山をみていた頃が懐かしくなりました。今年もちかっぱい走って下さいね。
投稿情報: Hugluna | 2011年6 月11日 (土) 21:02
Huglunaさん、
コメントありがとうございます。
いよいよ山笠の季節がやってきました。
今年は、6月末に日本に帰ります。
東京でニュージーランド好きの集まりも開催します。
もしよろしければ、是非いらっしゃってください。
詳しくは、「リアルニュージーランド」のホームページで。
よろしくお願いいたします。
投稿情報: 藤井 巌 | 2011年6 月12日 (日) 05:03