昨1月22日、オークランドの住宅地パーネルにあるセント・メアリー教会にてエドモンド・ヒラリー卿の国葬が行われました。
ヒラリー卿は、もちろん言うまでもありませんが、1953年に世界最高峰のエベレスト初登頂に成功した冒険家です。
しかし、彼の偉業は登山だけに留まらず、生涯を通じた慈善活動、教育活動、そして家族にとっては、素晴らしい父、そして偉大な祖父であったとのことです。
2008年1月11日。88歳の生涯を静かに閉じられました。
1月22日、国葬は午前11時から。
私達が、セント・メアリー教会に着いた時には、もう多くの人だかり。
暑いぐらいの素晴らしい夏の青空でした。
もちろん、国旗は半旗です。
この日は、なんとなく街全体が静かでした。
続々と到着するご家族の方々。
司教が教会の前で迎えます。
ヒラリー卿が安眠されている棺は、24時間前から教会に安置されています。
ネパールからも、シェルパ族の方々がいらっしゃっていました。
一般の人々は、もちろん教会に入りきれないので、教会の前にあるパブで式の経過をテレビ中継で見ています。
凄い人ですので、店の中に入りきれず、歩道からテレビを見ています。
スピーチを聞きながら、涙する人がたくさん。
ごつい身体をした若者や、初老のご夫人、はばかることなく、号泣していました。
スピーチも、心に染みわたる素晴らしいものばかりでした。
ヘレン・クラーク首相は、こうおっしゃいました。
"Sir Edmund Hillary's extraordinary life has been an inspiration to our small nation, and to so may beyond our shores too.
As individuals we may not be able to match Sir Ed's abilities or strength, but surely we can all strive to match his humanity and compassion for others. His values were strong, they are timeless and they will endure.
May Sir Edmund Hillary rest in peace."
彼女のスピーチの中で、印象的だったのは、エドモンド卿の凄さを表す言葉。
Determination (意志)
Courage (勇気)
そして
Humanity (博愛)
息子のPeter Edmundも、高齢にも関わらずとても活動的な登山家です。
彼は、生前のエドモンド卿の、家族にしか見せない一面を紹介し、とてもユーモアに溢れたスピーチを披露してくれました。
父親としても、エドモンド卿は凄い偉業を成し遂げたんだと思います。
「Sir Ed(サー・エド)」。ニュージーランドのみんなは、親愛をこめてエドモンド卿のことをそう呼びます。
Peterは、彼から学んだ一番のことは、次の言葉だと話してくれました。
"Don't be afraid to stand alone."
一人になることを恐れてはいけない。耐えて、そこに「いる」ことが大切なんだ。
Sir Edだから、言える格言だと思います。
Sir Edは、1975年に飛行機事故で最愛の妻と、長女Sarahを亡くしてしまう、悲劇に遭っています。
慈悲深いSir Edだから、その際の悲しみようはひどいもので、この偉大な父がとてもFragile(脆く)見えたと、次女の方がスピーチでおっしゃっていました。
そのSarahの息子、Sir Edの孫にあたる方のスピーチがとても感動的でした。
憚ることなく、スピーチ台でも泣きながら話された中、一番心に残ったのは、
"His hands are always big, strong, warm and smooth."
とっても大きな、強くて、暖かい、そして柔らかい手をしたおじいちゃんだった。。。
"When I said good bye last Friday, his hands were still big and strong."
そして、最後のさようならを言ったこの前の金曜日、握ったおじいちゃんの手はそれでも大きくて、そして強かったんだ。。。
本当に大事な人を亡くしたとき、笑顔で別れようと思いながら、どうしても涙が止まりません。
何度も、「泣いては駄目」と思いながら、こみ上げる想いでどうしても涙が出てきてします。
この日の、オークランドの空は、まさにそんなニュージーランド人全ての心を表していました。
綺麗な晴天は、式が進むごとに、悲しみの豪雨に。
泣くのを止めなきゃと思って、一度は上がるものの、また豪雨(号泣)。
予定の12時半を大きく過ぎて、13時40分頃になり、いよいよ出棺です。
オークランドの港に係留されている数々の船からは、これでもかという汽笛が。
空軍、海軍、陸軍の勇姿に担がれて進みます。
霊柩車の前には、ヒラリー卿の学校の生徒達が、マオリの踊りHaka(ハカ)でお見送りです。
Haere Ra!(さようなら)
そして、いよいよ安眠する墓地へと進んでいきます。
周りを囲む人々からは、自然に拍手が。鳴り止まない拍手が。
そして、人々が次々に声をかけます。
"Thank you, Sir Ed!"
"Farewell, Sir Ed!"
棺を載せた車はゆっくりと進んでいきます。
本当に、国民に愛されていたエドモンド卿。
私も、この場にいれたことを心から感謝したいと思います。
エドモンド卿は、ネパールに対する慈善事業が人生で一番大切なものだとおっしゃっていらしたそうです。
それは、エベレスト登頂のときに一緒に頑張ったテンジンに対する感謝の気持ちを体現したいということだと思います。
情熱、感謝、そしてとどまることない挑戦。
今、自分が出来ることから始めることが大切だけど、前に進んでいく為の素晴らしい感動を頂いたこと、心から感謝します。
Sir Edのご冥福を心からお祈りいたします。
ブラックさん、ありがとう
投稿情報: 館兄 | 2008年1 月25日 (金) 23:24
いいえ。
お互い、今からも頑張りましょうね。
投稿情報: ブラック | 2008年1 月26日 (土) 04:03
"Don't be afraid to stand alone."
思わず泣いてしまいました。
深い言葉ですね。
投稿情報: ぶっきー | 2008年1 月26日 (土) 22:30
ぶっきー、
素晴らしい言葉ですよね。
本当に、知れば知るほど、ヒラリー卿は素晴らしい人だったようですよ。
投稿情報: ブラック | 2008年1 月27日 (日) 04:30