人づてに素晴らしい所があると聞いていて、行きたいとは思っていた。が、なかなか足が向かなかった、というのはその素晴らしい所は日本ではそこまで有名ではなく、まして国際便は到着しない。しかし、その南島北部に位置する国立公園はキウィ(ニュージーランド人の愛称)のなかでは知らない人は居ない程有名である、ヨーロッパ、北米の観光客のなかではニュージーランドへ行ったら絶対に行く場所として認識されてさえいる。
南島北部のマールボロー・ネルソン地方は、曇りの多いニュージーランドの中でも晴れが多く、嬉しいことに晴天率はこの国のなかで一番らしい。それ故、このエイベル・タスマン国立公園までの道沿いには、数多くのブドウ畑、そしてワイナリーが軒を連ねる。行く先には山が見える、果たして本当にエメラルドグリーンの水と黄金に輝くビーチなんてあるのか、そんな疑問が頭を過ぎる。この界隈で一番大きな町ネルソンに到着。人口五万人程の町が、千人規模の村を通り過ぎてきた私にとっては凄く大きく見える。「明るい」、さっきまで見てきた風景とは明らかに違う、南国の様な雰囲気とでも言うのだろうか、この地方に入ってから全てが明るく感じる、そんな新鮮な発見を感じながら町を越え、さらに奥へと走る。
Kaiteriteri(カイテリテリ)、言い難いけど親しみやすい名前の村に到着。凄く綺麗なビーチ、そしてレストランバーが二件程あるだけの至ってシンプルな村。そしてそのビーチから「Kaiteriteiri Kayak」のツアーは参加すると聞き、集合時間の少し前に行ってみる。朝からレインボーカラーの帽子を被ったスタッフ達が元気に働いている、今回のガイドはChris、カナダ人の彼は北半球と南半球を行ったり来たりして夏だけの生活を送っているらしく、まさに夏しか興味ない男という感じ。
ボートで出発。「カヤックツアーだろ?」と聞くと、「基本的にこのツアーは復路を漕ぐのであって、往路は向い風が多いから漕がないんだ。」と夏男が言う。高速ボートに乗ること約二時間、Separation Pointというスタート地点に到着。
ドイツ人のPeterと私はW艇に乗り込みワイワイ漕ぎ出す、ビーチを背に右側がタスマンベイ、左側はこの国立公園の名の由来にもなっているエイベル・タスマンが、1642年に上陸したというゴールデンベイ、そして岩の上にはオットセイたちが手を振っている。一時間位して「風がどんどん強くなってきたから、今日はもうだめだね」とChrisが言う、後ろ髪をひかれながら、ボートで今日のキャンプ地へ移動することに。
Water Taxiと言われるこのボートのシステムは非常に良く出来ており、ビーチからビーチへの人の移動はもちろんのこと、カヤックも積む事だって出来る優れものだ。急にボートが止まり、「物足りないだろ?ちょっと遊ぼう」と気の利く夏男の誘いに乗ってカヤックと共に降りることに、そこからはキャンプ地までは二時間だ。
私は今回何も持っていかなかった。というのはこのツアー、シュラフ、テントから食料までのキャンプ用品は一切必要ないのである。衣類、歯ブラシセットだってキャンプ地まで運んでくれる。今までそれら全てを運ぶのが一つの美学としていた私にとって、それは新鮮だったが、「楽なほうが好き」ということに気付けた。さてChrisはというと、せっせとディナーの支度をしている、「手伝うか?」と聞くと「まずはワインだ」とチーズ&クラッカーを差し出す、素晴らしいガイドである。
この日のメニューはパスタ、とてもキャンプの食事とは思えないほど美味しい。夏のニュージーランドはなかなか夜にならない、「さっさと暗くならないかな」とChris。10:00近く、ようやく暗くなる、「よし」三人は近くの洞窟へ。奥がすごく狭い、四つん這いになってトンネルを抜けると、洞壁が光りプラネタリウムの様な光景が広がっていた。発光虫の仕業である、こんな洞窟がこの公園には海岸付近、そして森の中にも沢山あるらしい。
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