高校に入学する前、父親に「座右の銘くらい、言えないとな。」と言われた。
本当は探すもんじゃないんだろうけど、当時は真剣に探した覚えがある。でも全然見つからなかったから、ずっと座右の銘無しの生活を送ってきた。高校も大学も常に目標と目的があったから、必要じゃなかったんだと思う。それに、たいした苦労もしてなかったから、良い言葉にも重みなんて感じなかった。
社会人になるちょっと前、僕は自分なりに色々考えた。
自分がしたいことの為に、自分は何を出来るか。これを真剣に考えて、思ったとおりの道に進んだ。今振り返っても、良い方向に進んだと思う。
会社に入ってすぐに僕は、直属の上司に「3年経ったら辞めます。」と言った。きっと冗談だろう、と思って頷いていたけど、変なやつだって思われたと思う。でも、僕はその気だったし、そういう計画を立てていた。
3年間、真面目に働いた。沢山勉強した。良い会社だったから、このまま居ても良いかな、って思う事ももちろんあった。でも、3年が経とうとした時、夏目漱石が言ったこの言葉に出会った。
「千里の道は見ず、ただ万里の空を見る」
3年経って、ようやく仕事が上手に出来るようになった頃だった。でも、その言葉にドキッとして、会社を辞めて外国に飛び出した。ボロボロの車で生活したり、何でこんなことしてるんだろ、って思うことも沢山あったけど、大学の頃に考えたことからブレてはいない。良い方向に進んでいると思う。
それから、手前のことばかり考えてしまいそうな時、必ずその言葉を思い出す。父親に言われて、10年以上経ってようやく見つけた座右の銘。これで高校に胸を張って入学できるくらいの大人になった。