「今回は俺の知っているクレージーな奴を集めたんだ」
と言うSeb、彼はスコットランド出身のアウトドアマン、サーフィン以外で思いつくアウトドア・スポーツは全て器用にこなす。
そんな彼が、先述の「クレージーな奴」を集めてマウンテンバイク・トリップを企画した。僕もどうやら、そのクレージーなメンバーの一員らしい。「実は日本人は強いんです」啓蒙活動家の僕にとっては非常に嬉しい話し。
行き先は西海岸。
カリフォルニア、フランス、そしてポルトガルなどに代表されるように、西海岸と言えば温暖なイメージ。でも、ニュージーランドで西海岸と言えば、南極の少し北側から発生する低気圧のお陰でいつも大変な天気の場所。そこはまさにWilderness、素晴らしい自然が剥き出しのままで取り残されている。ブロンドの女の子なんて全く似合わない場所。
今回のトリップの目的は、そんな西海岸の山の奥の奥へと延びる、Deniston Short Cutを逆から走ること。NZでマウンテンバイクをしている人で、ここを逆から走った人なんて聞いたことがない。何故って、目計算で既に2000mくらいの標高差を登るから。下りメインの順コースで走っても、6~8時間かかるトレイルを何であえて逆から行くのだろう。そんな疑問が付き纏ったけど、仕事を早めに切り上げた僕達は全員浮かれていたから、誰も口に出さなかった。
明くる朝、快晴の土曜日。
朝食を食べながら予定を話し合っていると、今回のメンバーの1人、Bevanが地図を入念にチェックしながら口にした。
「走る前に入地許可を取る必要があるって書いてあるけど、Seb、取ったよな?」
「えっ、マジで?そんなの取ってないよ」、Sebはそういう男、どこか抜けている。
まあ、他にもトレイルはいっぱいあるから、別にそこじゃなくて良い。というわけで、皆でPlan Bを考えることに。
5分後、「泥だらけになるけど、最後の川で洗うことが出来るトレイル」に決まった。ここはよく雑誌や、アウトドアカタログで見るトレイルだ。
トレイルからの景色は本当にすごい、このままどこに行っちゃうんだろってくらい。でも、全然進まない。泥、泥、泥、いつになったら洗い流せるんだ、これ?
小さな泉を見つけた僕ら、こびり付いた泥を洗い落としてようやくランチ。「何か思ったよりこのトラック長くない?」「さっきから担いでばっかりだけど、いつになったら走れるんだ俺ら?」、なんて話しながらのランチ。
ランチの後は、最後の「洗濯機川」までのシングル・トレイル、ようやく走れた僕らは皆飛ばします。やっぱりマウンテンバイクは最高!
「この川、一気に渡れない奴は、Looserだよな」と言った側からLooserになった男、Mark。
「Mark、2回目で走っても烙印は消えないからね」と言う冷たいアナザー・クレージーズ。
とは言っても自転車の泥も、体の泥もキレイさっぱり洗い流し、なんだかんだでこの代打プランを楽しんだクレージー軍団でした。